LET THERE BE MUSIC

自分の好きな音楽、アーティストに対する考察。まずは自己満

BUCK-TICKの話

 僕の音楽的嗜好に多大な影響を与えた日本の宝、BUCK-TICKを今日は紹介したい。

 BUCK-TICKは高校生の頃、レンタルで借りたベストアルバムから聴き始めた。そのアルバムは年代順にシングルが並んでおり、初期の曲は、同郷の群馬出身のBOOWYの流れを組む、派手な髪型の風変わりなビート系バンドという認識で聴いていたように思うが、よりノイジーでパンキッシュな演奏や、より変態的でアヴァンギャルドなコード進行とアレンジ、独特のきらびやかなメロディに明確な違いがあった。何よりBOOWY布袋寅泰一人だが、こちらは今井寿と星野英彦でギタリストが二人の5人組バンドだった。中期以降の曲は、暗い雰囲気に観念的で哲学的な歌詞の曲が増え、アレンジもファンク、16ビートやストリングス、電子音やノイズを取り入れるなど音楽性もより幅広く成熟したものとなっていた。特にボーカル櫻井敦司の歌唱力の向上が著しく目立っていた。

 彼らのアルバムの軌跡は、バンドという形式にこだわりつつどこまで音楽的冒険ができるのかという試みの過程でもあると言えるかもしれない。BOOWY解散年に彼らの後継を名乗るかのように発表されたメジャー1stアルバム『SEXUAL xxxxx!(1987)』より暗く深い表現を求めてゴシックロックの要素を取り入れた3rd『TABOO(1989)』その路線をさらに押し進めた4th『悪の華(1990)』とどれも魅力に溢れたアルバムだが、代表作といえばやはり、彼らのスタイルを確立した歴史的名盤と名高い5枚目のアルバム『狂った太陽(1991)』だ。

 一聴してわかるのは前作と比較して格段に向上した音の良さである。前作が薄っぺらさが目立った残念な音だったため余計にそう感じるのかもしれないが、それにしても見通しの良いスッキリしたミックスだ。各曲のクオリティも申し分なく、ここにきてBUCK-TICKの本領発揮かと思われるほどだ。

 今井寿の変態さと天才さを感じた曲が2『MACHINE』だ。曲自体はお得意のストレートな縦ノリのビートロックなのだが、左右でギターの音を分けており、一番の歌の終わりに星野が片方で忠実にカッティングをしているのに対して、今井寿は残響音をエフェクターでわざと響かせ、スイッチングの音まで入れてノイズを出しているのだ。普通のバンドだったらなんのこっちゃであるが、櫻井の描く狂気的な歌詞と音世界に完璧にマッチしているため、実に効果的に聴こえるのだ。アヴァンギャルドかつ考え込まれたアレンジを作り出す奇才、今井寿。彼の弾くギターはギターの音がしないのが通常運転だ。

 また星野英彦も6『JUPITER』という一世一代の名曲でその存在感をアピールしている。この儚くも美しいバラードは亡くなった母に捧げたという櫻井の歌詞とともに、聴く人々の琴線に触れ続けるBUCK-TICKのスタンダードナンバーになった。

 BUCK-TICKは日本の宝。お前に聴かせてあげたい。