LET THERE BE MUSIC

自分の好きな音楽、アーティストに対する考察。まずは自己満

音楽の中のアメリカ

 アメリカ的なる音楽という、なんとも人を食ったようなジャンルがあるらしい、アメリカーナだ。要するにアメリカを感じさせる音楽、フォーク、カントリー、ブルース、ゴスペル、ロックンロールなどの要素を含んだ混合音楽のことを指すらしい。それって要するにThe Bandのことだったりしないか?と思ったのでこの記事を書いてみた。

 The Bandほどアメリカ南部の音楽をルーツにしたロックをその詩情とともに誠実に追求したバンドもいないと思うのだが、唯一のアメリカ人だったリヴォン・ヘルムを除きメンバーは全員カナダ人であったという事実が面白い。やはり、異邦人から見たアメリカという国は物語を語る題材としてよほどの魅力があったのだろうか。当事者じゃないからこそ、南部に対する憧憬を素直に表現できたということもあるのかもしれない。現代のつまらなくてリアルな合衆国アメリカではなく、ハリウッド映画や西部劇の中で誰もが夢にみたファンタジックなアメリカ像。僕たちがThe Bandにみるのはそうした古き良きアメリカだ。

 アメリカーナとは言えないが、時代は進み、Bruce Springsteenが表現したアメリカは痛々しいものだった。英雄として戻るはずだったベトナム帰還兵への世間が見る目は冷たく、まともな職にも就けず、いくあてもなくひどい暮らしを続けている。そんな主人公が「俺はアメリカで生まれた。アメリカで生まれたんだ」と繰り返すBorn In The U.S.A。歌詞の辛辣さに反して、曲はキャッチーなシンセサイザーのリフレインに80sのリバーブがかったサウンドが映えるポップなものだ。だからなのか、ロナルド・レーガンがこの曲を愛国ソングとして自身のキャンペーンに使用してしまったという。

 日本のアーティスト、浜田省吾は日本人である自分がアメリカ生まれのロックをやっているということになんとも言えない葛藤を感じていたようだ。そしてその思いは戦争によって関係をつくらされた、アメリカと日本という国を捉え直す、というところにまで及んだ。アルバム『J・BOY』と『FATHER' S SON』にはそうした苦悩が音楽とともに刻まれてる。こうした浜田省吾の試みにはおそらくBruce  Springsteenの影響があるだろうが、こんなにシリアスに日本を考えて問題提起をするアーティストを僕は浜田省吾しか知らないし、現代の日本を考えることでアメリカが浮かんでくるという構造を初めて知ったのもこの2枚のアルバムがきっかけだ。