LET THERE BE MUSIC

自分の好きな音楽、アーティストに対する考察。まずは自己満

脳髄に響き渡るサイケデリック・ビート Primal Scream『Screamadelica(1991)』

 プライマル・スクリームの『Screamadelica(1991)』を久々に聴いてハマっている。というのも先日、大量の除光液の臭いに耐えながらの仕事でラリってしまった帰りに、どうせなら試してみるかということでそれっぽい音楽を聴いてみたのだが、これがなかなかシンナーでフラフラの脳髄に響き渡る多幸感という感じでものすごい良かった。

 1960年代のサイケデリック・ミュージックは当時は過激な音楽だったのだろうが、今聴くと時代の産物として鑑賞する感じでしか聴けず、よくこれでトリップできたよなぁと思ってしまうのに対して、このアルバムはテクノ、ハウスミュージックをを通過したビート感覚があまり古臭さを感じさせないので新鮮に聴けた。1『Movin'On Up』はローリング・ストーンズの悪魔を憐れむ歌の90年代的解釈のようで楽しく、アルバムの幕開けにふさわしい名曲だ。3『Don't Fight It Feel It』はキャッチーで、テクノの編集コラージュ感覚を最も感じる曲で僕が最も好きな曲だ。生楽器はどこへやらといった感じだが、ソウルフルな女性ボーカルがかろうじてロックとの間をとりもっている感じだ。ビートルズの『Lucy In The Sky With Diamonds』のような昔のサイケデリック・ミュージックにみられるふわふわした浮遊感といったものは4『Higher Than Sun』にも共通してあるのだが、この曲の面白いところは、不気味なシンセリフとループドラムにバッド・トリップした時の感覚も同時に表現されているところだ。もしくは、薬で多幸感に浸っていた後の薬が切れ落ちつかない精神状態を表しているような。こういった表現はまさしくロックとハウスミュージックの融合という試みの中からしか生まれなかっただろうし、薬でキメてから踊るという当時のレイヴ・カルチャーの刹那主義的な儚さも感じる。5『Inner Flight』はビーチボーイズの『Pet Sounds』収録のインスト群のような繊細で切ないメロディを持ったインストだ。6『Come Together』はブラック・パワーの演説?マルコムX?がサンプリングされ、60年代のヒッピーカルチャーのような連帯を強く呼びかけるコーラスがグルーヴするコンセプチュアルな曲だ。

 カーティス・メイフィールドサム・クックビートルズ、の曲をもじったようなこのアルバムのいくつかの曲名は、あの時代をリスペクトし90年代のヒッピー・ムーブメントを牽引していくというボビー・ギレスピー決意表明だったのではないか。