LET THERE BE MUSIC

自分の好きな音楽、アーティストに対する考察。まずは自己満

George Michael『Listen Without Prejudice(1990)』

 このアルバムも布袋さんの本で知ったもので、George Michaelの2枚目のソロアルバム『Listen Without Prejudice(1990)』直訳するとアルバムタイトルは「偏見なしで聴いて」という意味だと思われる。

 ここでは、かつてのWHAMや1stアルバム『Faith(1987)』でやっていたシンセサイザーやリズムボックスなどを使用した80sなアレンジはなく、アコースティック・ギターやピアノなどの生楽器やストリングスを使用した、オーガニックで地味だが人間味溢れる、Georgeの体温が感じられそうな音楽が収められている。発売当時の彼の言葉を借りれば「すごいグレートなレコードを作りたかった。偉大なる人達、デヴィッド・ボウイエルトン・ジョンビートルズなどのしてきたことを僕も試みたかった。まだまだ、そこまで到達してはいないけれど、この新しい音楽は、僕の作り上げた最高のものだと思う。僕は、かなり近づいたんじゃないかな?」ということらしい。

 WHAMや1stでは売れるためのマーケットを意識した音楽づくりを多少なりともしていたが、憧れのアーティストのような境地に達したい、自分が納得できる音楽作りをしたいがために、多少売れ線から外れようがアーティスティックなアルバム作りを妥協なく行なったということだろう。だから、自然と派手な音でなく、よりアコースティックな音に、よりGeorgeの声とスピリットが演奏に溶け込む曲たちになったのだと思う。まさしく自分をさらけ出した曲たちのアルバムだったので「偏見なしで聴いて」ということだったのではないか。

 地味でアコースティックな音になったとはいえ、そこはやはりあのWHAMのGeorgeであり、全編シングルカットできそうなポップソングに溢れている。2「FREEDOM 90」はサンプリングされたコンガの音とJBの「Funky Drummer」のリズムがグルーヴィーなゴスペルポップであり、コーラスに生命の躍動を感じさせる。8「HEAL THE PAIN」は「Here There Everywhere」などのビートルズ時代のポールのラブソングを思わせるどこまでも優しく誠実なポップソングだ。対してジャジーなバラード5「COWBOY AND ANGELS」はどこまでも暗闇に沈んでくようなウッドベースとドラムのリズムに、抒情的なストリングスとピアノが表情を加え、Georgeの声が空間を漂う美しい曲だ。

 GeorgeはWHAMのイメージしかないそこのあなた!ぜひ聴いてね!