LET THERE BE MUSIC

自分の好きな音楽、アーティストに対する考察。まずは自己満

リスペクトされた若大将

 加山雄三が好きだ。熱心にアルバムを集めているほどのファンでもないのだが、彼がつくった曲の良さや演奏の素晴らしさには感銘を受けており、純粋にその音楽性のファンだ。加山雄三の存在自体は昔から知っていたが、その重要性に気付かされたのは、井上陽水桑田佳祐などニューミュージックと呼ばれた日本の新しい音楽の勃興を支えた多くのアーティストがその影響を公言し、音楽的に評価をする声を聞いたことだった。特に、自身のアルバムで『ブーメラン・ベイビー』をカバーするなど、多大なリスペクトを表明していた山下達郎は「加山雄三さん『君といつまでも』中学生の時この曲がレコード大賞と信じて疑わなかったのに、レコード大賞が全然違う曲だったので、それ以来レコード大賞を一切信用しなくなった」というほど思い入れがあったようだ。言わずと知れた元祖渋谷系の少年時代にまで影響を与えていた加山氏、では、加山雄三のどこがそれほどすごかったのだろうか。

 まず時代が時代である、日本にシンガーソングライターという概念がまだ一般的ではなかった1960年代に加山雄三は洋楽から影響を受けた音楽を自分でつくって演奏していた。後の『海、その愛』『サライ』のイメージではなかなか湧きづらいが、この人は元々徹底的な洋楽志向のアーティストだったのだ。そのことは、1966年発表『恋は赤いバラ〜加山雄三アルバム』という全編英語詞のアルバムをデビューアルバムにつくっていたことが証明している。またこのアルバムでは日本初の多重録音を行なっているようで、音楽的な実験の試みという側面でも同時代のビートルズなどのバンドから影響を受けており、うまく消化して自身の音楽にしていることがわかる。海外からの情報を得る手段が少なく、伝わる速度が現代よりはるかに遅かったと思われる時代にここまでのことを成し遂げたというのはもっと評価して然るべきだろう。

 何より純粋に曲がいい。ペリーコモが好きだったという彼の『君といつまでも』に代表されるバラードのロマンチックで優雅な響きのあるコード進行やメロディは、時代に左右されない良さがあり、曲間の語りも微笑ましくまさしく幸せな気分にしてくれる。また、当時のバンドメンバー、ランチャーズによる『蒼い星くず』などのロックナンバーは、ベンチャーズにも劣らないというか、激しさやロックさはそれ以上あるんじゃないかと思わせてくれるほどかっこいい。

 永遠の若大将はコンサートを卒業しようが永遠なのだ。