LET THERE BE MUSIC

自分の好きな音楽、アーティストに対する考察。まずは自己満

T・REXタシーを感じろ!!!

 「初めてのロックンロール体験…、きっかけはマークボランだったけど……マーク・ボランはね、ルックスから入っていったかな。そのころは音の理解力も深くないわけだから、グラム・ロックのかっこよさに惹かれた。リッチー・ブラックモアとかジミー・ペイジとかは、何大怪獣を覚えるみたいな意味で通ったけど、とにかくマーク・ボランのポスターでロックに憧れたという。」以上はマーク・ボランことT・REXを語った布袋寅泰の弁である。

 音の理解力といっていることから、必ずしもその音楽性を評価しているわけではなさそうだが、そのグラム・ロックとしてのかっこよさについては異論はなさそうだ。グラム・ロック創り出し、あのデヴィッド・ボウイとその人気を二分するほどのムーブメントを起こしたマーク・ボランであるが、ジギー・スターダストをそのキャリアの一部として、その後も音楽的変遷を繰り返していったデヴィッド・ボウイに対して、マーク・ボラングラム・ロックの栄華と衰退を体現し、30を前にその人生を終えてしまった。そのことも布袋のその評価の低さに拍車をかけているのかもしれない。だがしかし、今日においてもボラン・ブギーはいまだにその妖しい魅力を振り撒いているし、他に比較すべきものがないその音楽性は独特で面白いものだ。

 確かに、初来日時、下手すぎてどの曲を演奏しているのかわからないと言われたという噂もあるほど、どの曲を聴いても聴こえてくるのはお世辞にもうまいとは言い難い、拙いエレキギターの音である。また使われるコードの種類や数も少なく、曲の構成もよく考えられた音楽的なものというよりは感覚的なセンスによるものに思えるし、ジャムセッションでできていると思われるほど繰り返しが多い。しかし、それらの欠点は一度このボラン・ブギーにハマってしまえば味となりうる。

 なんにせよ、その子供が何も考えずにつくったような曲に自分の味を落とし込めるのがスゴイ。ボキャブラリーは少ないがその中で自分の全てを表現できるアーティストだったのだろう。単純な曲構成もトニー・ヴィスコンティの華麗なストリングスアレンジによって、飽きが来ない素敵な音空間を創り出しているし、バンドの演奏も手堅く的を得ている。良いグルーヴの中の繰り返しはミニマリズムのような効果を生み出して、不思議な酩酊感を産んでいる。チープなおもちゃのようなキュートでプリミティブな正しいロックンロール、それがボラン・ブギーだったのではないか。