LET THERE BE MUSIC

自分の好きな音楽、アーティストに対する考察。まずは自己満

『The story of Moondog』

 Moondogというアーティスト、ミュージシャンがいるらしいというのをある音楽サイトで知った。アンディウォーホールが描いたアルバムジャケットの特集で見たのだが、名前の響きからして何事かありそうな意味深な名前、月。犬。なんかファンタジックでいいなあ、とApple musicでこのアルバムを聴いてみて驚いた。

 1曲目「Up Broadway」

 街中で録られたと思われる車の往来のノイズ、そこに同程度の録音レベルで絡まる粗野なジャズミュージック、ローファイで原始的な打楽器のビート、なんだこれ!である。1955年にこんなぶっ飛んだことしてた人がいたのか!?

 2曲目「Perpetual Motion」

 一瞬で終わるし、なんかいびつで変だけど、完全にガムランです。ガムランがバリで録音され、脚光を浴びるのはこの後10年くらい先なので、意識的に行われたのだとしたら、とてつもない先取りである。

 5曲目「Ray Malone Softshoe」

 ジャズ的なリズムの使い方をしているパーカッションだけの曲でとてもかっこいい。タイトルから考えてもタップダンサーとセッションをしているのだろう。純粋にノれる。

 アルバム全体で同じリズム楽器を使っており、土着民族的なリズムが強調されているが、それほど広い音像で鳴っているわけではなくチープな響きをしている。その音質も含めてまるで初期のリズムボックスのようで、これぞ元祖人力テクノだといいたくなる。どうやらこの人はオリジナルの楽器をつくって演奏していたようなのでその音なのだろうか?

 Wikipediaで調べて得た情報もなかなかに信じがたく、民族の儀式で打楽器を叩いていた、事故で盲目になったが音楽理論の本を点字で読んで勉強を続けた、ニューヨークで20年間ホームレスになっておりヴァイキングの兜をかぶっていた、著名なクラシック家やチャーリーパーカーなどのジャズ演奏家とも交流があった、ロックンロールを広めた伝説のラジオDJであるアランフリードに名前をパクられたなど、なかなかに神秘的な人物というか、ほとんどマンガである。プリファブスプラウトの曲でこの人の名前と同じ曲があったが彼と関係はあるのだろうか?

 音楽っていうのは深みにハマるほど信じられないような人物が、信じられない時代にいたことがわかるのかもしれない。まだまだ自分も知らないアーティストばかりなんだろうなぁと思う。