LET THERE BE MUSIC

自分の好きな音楽、アーティストに対する考察。まずは自己満

『ジョンの魂』

 今日は朝早くから目が覚めてしまったので、布団の中でJohn Lennon『ジョンの魂』を聴いていた。

 鐘の音がゴーン、ゴーンと鳴り響き、始まった1「マザー」でジョンはシンプルで痛々しく、切ない歌詞をまるで独白するかのように歌っていた。飾り気のないピアノの音とリンゴのドラムが鼓動のように響くシンプルな伴奏が静けさまで感じさせるようだった。「Mama don't go. Daddy come home」と繰り返すジョンの歌は徐々にノイジーに音割れしていき、最後にはもはや嗚咽して泣き叫んでいるようだった。

 ジョンはこのアルバムをつくる前に原初療法という精神治療を受けていたようで、学生時代に母を失ったジョンの記憶がよみがえり、大声をあげて泣き出したというエピソードがある。この曲はその時の体験から生まれたものだ。

 記憶の深いところにある心の傷をもう一度体験し直すというのはなかなか危険なことだししんどいことだろうが、それを自身の作品の中にまで入れて、世に問うジョンの覚悟というか絶対芸術主義的なところもすごい。聴いていて、本当はこれ聴いたらあかんやつだろという思いがでてくるほどだ。世の中には小説のようにフィクションを書き上げることで歌詞を成立させているアーティストもいっぱいいる中で、初のソロアルバムでジョンは自分を丸裸にしたのだ。ビートルズの支持された歌詞やサウンド、アルバムの完成度に勝つには、もう自分の内側をさらけ出して、よりアーティスト性を打ち出していくしかないとジョンは思ったのだろうか。

 この曲の中で、僕も両親に対して共感できる部分があったので余計に心に響いてしまって、久々におセンチな気分になりました。